2005年07月06日

カスミザクラ

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雨上がりに霧が昇り、カスミザクラが浮かんだ。その右上、わずかに紅色の花が残るのはオオヤマザクラか。※写真は、住田町内で撮影

■バラ科サクラ属
■学名:Prunus verecunda
■和名:霞桜
■別名・方言:ケヤマザクラ
■分布:北海道、本州、四国/朝鮮半島、中国東部
■落葉高木
■花期:4月〜5月
■性型:両生花
■虫媒花
■鳥散布
■冬芽:互生
■用途:建築材、楽器材、彫刻材、高級家具材など

春の終わりを山へ告げる桜

■カスミザクラ(霞桜)とは、花を咲かせた姿を霞に例えたもの。別名のケヤマザクラ(毛山桜)とは、無毛なヤマザクラに比して、葉の裏や葉柄、花柄に毛があるからという。
■ヤマザクラと同様、葉が開き始めると同時に花を咲かせる仲間だ(ヤマザクラ群)。ただしカスミザクラは、開花が開葉にやや先立ち、花の方が目立つそうだ。ヤマザクラと区別するポイントの一つともされている。
■カスミザクラは、ヤマザクラよりも標高が高く、オオヤマザクラよりも低い場所に自生する。
■花は、ヤマザクラやオオヤマザクラの花が散る頃から咲き始める。そして、カスミザクラが散るとともに、山の春には終わりが告げられる。

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万能な山桜

■山桜の樹皮を用いた工芸品で有名なのが、樺細工。今年訪れた樺細工の中心地、秋田県角館には、深く渋みのある茶筒やブローチまでがお土産品として並んでいた。
■樺細工に用いられる山桜の樹皮は、長い年月を経ても色褪せない優れモノだそうな。この樺細工には、カスミザクラの樹皮も用いられている。

■地元のおじさまから、「山桜は万能なんだよ」と聞いたことがある。
■「材は、削りやすいし表面がきれいに仕上がるから、版画の土台に使われる。捕った魚を薫製にするために山桜のチップを使ってきたし、山桜をほだ木にしてナメコを作れば、味が違って美味しい。ナメコの味は、俺がそう思うだけかもしれないけどさ」
■ここ東北の雑木林で白い花を咲かせる桜は、ほぼカスミザクラと考えてよいそうだ。私が住むこの町では、人々の営みの中でカスミザクラが多く用いられてきたのかもしれない。


桜への想い

■現代の日本人にとって桜と言えば、染井吉野だろう。しかし、少々ひねくれた私は、染井吉野に対して斜に構えてしまう。あまりにも眩しすぎるのだ。団子の方は、好きだけれども。

■それが山桜であれ、古来から日本人はその花に魅せられ、あまりの美しさと対峙し、心を揺さぶれ続けてきたのだろう。
■「世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし」と詠んだ在原業平然り、「ねがはくは花の下にて春死なんそのきさらぎのもち月の頃」と詠んだ西行然り。妖艶なまでの美しさは、人の心を乱し、惑わす。

■そして坂口安吾は、『桜の森の満開の下』という小説を残している。山賊がさらった美しすぎる女の正体が実は鬼であり、桜の森の満開の下で絞め殺してしまうお話(ラスト数ページの文章の美しさといったら!)。
■突き放される結末。桜の森の満開の下に漂わせた透明な切なさ、孤独を、安吾は「ふるさと」と呼んだ。
■無意識にも避けがちな切なさや悲しみには、本質的な何かがあるのかもしれない。例えば、失恋という心の傷に、透明な何かがあるように。それは、散りゆく桜のように。

■美しい花を散らせた桜は、新緑に包まれる。生きるための営みだ。喪失からの創造。
■緑に覆われた桜の樹を見上げる。ちょっぴりホッとする。


【参考にした主な本とサイト】
山渓ハンディ図鑑3 樹に咲く花―離弁花@
植物雑学事典(波田研)
木材詳細図鑑(m-plan編集)
角館町樺細工伝承館HP

update:2005-07-08


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posted by happyisland at 21:28| 岩手 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 種山ヶ原樹木図鑑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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